これまでの書道教室は“字をきれいに書けるようになること”を目的にされてきました。
しかし昨今、教育現場では子どもの姿勢の悪化が叫ばれており、私自身もそれを痛感しています。
姿勢はとても大事です。長年姿勢を研究されている専門家によれば、姿勢がよくなるだけで、自然と集中力が向上するとおっしゃっています。
書を通じて姿勢を徹底的に意識することで、子どもたちの集中力や持続力、自制心といった非認知能力を向上させられないかとの思いから誕生したのが、この『よひせんプログラム』です(岡山大学全学教育・学生支援機構助教 中山芳一氏(教育方法学)との共同開発)。
非認知能力とは、学力のように測定できる能力ではなく、情動制御力や他者との協働力などのように、状況によって変動しやすく測定が困難な能力のことをいいます。人生の質を高めるのに重要なスキルと言われ、OECDをはじめ、今世界中で注目されています(OECDでは社会的情動スキルと呼んでいます)。この非認知能力は社会的成功に結びつきやすいという研究結果があり、2020年からは大学入試でもこの非認知能力を評価の対象とすることが決まっています。
そして、この非認知能力の向上がいわゆる学力の向上につながるであろうことも最近の取り組みからわかっています(広島県熊野町の事例)。
もちろん、これまでも姿勢の大切さはどこの書道教室でも伝えてこられたと思いますが、子どもたちはどうしても字を書くことに一生懸命になるあまり、姿勢が崩れやすくなってしまいます。
また、書は線の芸術ですから、その本質である線にもっとこだわりたいという思いもあります。
そこで、この『よひせんプログラム』では、あえて字は書きません。
徹底的に姿勢を意識し、少しでもよい線をひくことを目的とします。
(それによって自ずと字がきれいになることは経験的にも確信しています。)
姿勢の定着には最低でも3ヶ月から半年はかかると思いますし、毎日5分でも意識することがとても大切ですので、毎日行っていただく簡単な課題も用意させていただきます。